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魔法のカクテル 10

Author: 煉彩
last update Last Updated: 2025-08-26 21:34:26

 部屋をよく見ると、大きなソファとパソコン、デスクが二つ、オフィスにしては物が少ないけど、本当に社長室みたいな雰囲気の部屋。

「歩ける?ちょっとこっちに来て。ここの窓から見る夜景がとても綺麗なんだ」

「夜景!?」

 夜景なんて見ている場合じゃ。

 予想もしていなかった言葉に驚きながらも、彼のあとをついていく。

 大きな窓から見える景色は

「キレイ……」

 そう呟いてしまうほどネオンで輝いていた。

 いや、キレイだけど。

 こんなところで夜景なんて見ている場合ではない。

「加賀宮さん、もう本当に大丈夫ですから。ありがとうございました」

 私は彼に一言伝え、部屋から出ようと振り返った。

 が――。

 彼に腕を引かれ、止められた。

「加賀宮さん?」

「今日は帰さないよ」

「えっ?」

 彼はクスっと笑ったかと思うと

「もうこんな演技止めるね」

 そう言ってメガネを外し、近くのデスクの上に投げた。

「こんな風に··会えると思ってなかった。まぁ、···のことなんて覚えてないと思うけど……?」

 私、加賀宮さんと会ったことがあるの?

 彼に私の名前を伝えてない……よね!?

 だけど、美月って知っている。

 ていうか、さっきと話し方とか全然違う。

 加賀宮さんが私との距離を詰める。

 右手の手首を彼に掴まれていて、離してはくれない。

 一歩下がるごとに、壁際に追い込まれていく。

 ついに壁に背中がついてしまった。

 近距離で視線が合う。

 目を逸らすと、顎を掴まれ

「んんっ……」

 強引にキスをされた。

 片手で彼を押し返そうとするも、彼の身体は動かない。

「はっ……。んっ……」

 息ができない。力も入らない。

「俺がさっき··に飲ませたカクテル、Love Potionってカクテルなんだ。媚薬とか惚れ薬とか……。そんな風に言われてる。その効果は酒と一緒でしばらく続くから。ね?キスだけで身体がもう反応してるだろ?」

 なに、それ。

 媚薬とか……。惚れ薬とか……。

 そんなの現実に存在するわけがない!

「そ……んなの……ウソよ……。あるわけがない」

 彼は私の耳朶をカプっと噛んだ。

「んぁ……!」

 なんでこんなにゾクゾクするの?

「ほら?」

 耳元で彼が一言囁いた。

 声と息が耳に残り、それだけで力が抜ける。

「抵抗できなくなった?」

 
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  • Love Potion   過去 9

     アパートに着き、部屋の前でノックをする。 加賀宮さんは出てこない。  寝てるかな?「ごめん。私だけど!」 ノックをしながら声をかけた。 すると――。「どうした?」 扉が開き、加賀宮さんが出てきてくれた。「具合が悪いって聞いて」 加賀宮さんはとても怠そうだった。「亜蘭が教えたのか。今日は帰って良いよ」 そう言って彼は扉を締めようとした。 なにその対応! 呼び出したい時だけ呼び出して、あんなことして。「ちょっと!何それ!あなたが帰れって言っても、帰らないから。都合の良い時だけ私を利用して。あなただけズルい!」 何てこと言っちゃったんだろう。 どうして加賀宮さんにはこんな強気なことしか。「わかった。とりあえず、入って」 彼は諦め、私をすんなり家の中へ入れてくれた。 そんなに体調悪いんだ。  ベッドにポスっと座ったかと思うと「ごめん。今、美月、大変な時だろ?働きだしたばかりだし。お前も疲れてると思って。風邪もうつしたくなくて。言葉が足りなかったな」 帰そうとしたのは、彼なりの優しさだったの? なのに私は……。 彼らしくなく素直に伝えてくれたのは、本当に具合が悪いからだよね。「私こそ、ごめんね」「いや、いい」 そう言えば、顔赤い。 彼はそのままベッドに横になった。「あー。久し振りに風邪ひいた。辛い」 加賀宮さんでも弱音とか、吐くんだ。 早く元気になってほしいけど、素直なところとか、そのままでいてくれればいいのに。「ねぇ!着替えなよ。ワイシャツより、楽な格好になった方が良いよ」 彼は相当怠いのか、仕事から帰ってきたままの上着を脱いだ状態で寝ている。「面倒……」 恐る恐る彼に触れる。「熱い。体温計どこ?薬は飲んだ?」 解熱剤飲んだなら、下がっても良いはずだけど。「体温計はどっかに……ある。薬は飲んでない……」 部屋を見渡すも、体温計の場所がわからない。 薬は机の上にあるけど。「ご飯も食べてないんでしょ?」「うん」「ご飯、うどん作るから待ってて。あっ、寝てても良いよ。そしたらちゃんと薬飲んでよ。スポドリも買ってきたから、水分摂って。近くに置いとくから」 ご飯食べてから薬を飲んで、ゆっくり休んだ方が良いよね。「わかった。てか、飯……。作ってくれんの?」 彼はまだぼんやりと目を開けている

  • Love Potion   過去 8

    「おい。俺たち管理職だけの情報だろ。キッチンでそんなこと言うなって。他のスタッフに聞かれたらどうすんだよ」 落ち着きなよと平野は小声で彼女をなだめる。「うるっさいわね。私、ああいう女が大嫌いなの。何も努力してないのに、人生上手くいって調子に乗っている系。しかも私の加賀宮社長に馴れ馴れしく……」「お前が社長に憧れてるってのは知ってるけど。九条さんとは一時的な付き合いだけだし、既婚者なんだから、社長だって相手にしないって」 平野は、藤田が社長に想いを寄せていることを知っている。 さらに彼女を激情させないよう、言葉を選びなら和まそうと必死だ。「そうよね。既婚者になんか。社長も優しいから、気を遣っているだけ。うちの会社のためを思ってだもんね」 藤田の肩の力が抜けた。「そうそう。少しの辛抱だから我慢しろよ」「ありがとう。相棒」 彼女のご機嫌は回復したようだった。「俺も加賀宮社長に挨拶に行ってくる」「待って。私も社長の食器を下げに行く!」 想い人に近付きたいと、平野のうしろ姿を追いかける彼女であった。…・…・―――…・・…・―――― 無事に初出勤が終わり、帰宅をする。 見学しているだけだったけど、実際にランチも食べることができたし良かった。 明日もう一日、お客さんの様子、キッチンの様子を見せてもらって、いろんなことをまとめないと。 こんなことで疲れたとか感じちゃいけないんだろうけど、久し振りに充実した疲労感だな。 玄関を開けリビングへ行くと、ソファに孝介が座っていた。「ただいま」 一応、声をかけてみる。「今日は?ミスってないだろうな」 何それ。自分の心配ばかり。「大丈夫だと思う」 私の返答も自然と無愛想になった。「だと思う?お前が感じてないだけで、周りが何か思うことがあったらどうするんだよ!?」 どうしてそう突っかかるの?「大丈夫です。何もありません」 チッと彼は舌打ちした後「夕飯は十九時に準備しろよ。それまで俺、寝てるから」 そう言って寝室へ向かった。 夕飯は美和さんが作ってくれてるから、お皿に盛り付けるだけなのに。   たまには自分が用意しようとか思わないの? 次の日もベガへ出勤した。 空いている時間にリーダーである平野さんと藤田さんに質問をしながら、昨日と同じようにお客さんの滞在時

  • Love Potion   過去 7

     私が席に戻ると、ランチメニューがすでにテーブルの上にあった。  今日の日替わりランチメニューは『大葉とたらこのパスタ』 スープとサラダが付いている。 ランチのみ、プラス二百円でドリンクも選べるようだった。「美味しそう!」 大葉の香りが食欲をそそる。「食べてみて?」 彼の言葉を聞き 「いただきます」 一口、口の中に運ぶ。「んっ!美味しい」  普通に美味しかった。 加賀宮さんはランチボックスを開け、美和さんが作ってくれたおかずを口の中に運んだ。 ちょっとドキドキする。  加賀宮さんを騙しているわけではないが「美月、この前より料理が上手になった?」 なんて言われたらどうしよう。  彼の様子を伺う。  一口、さらに一口食べ。無言。 卵焼きを食べ終わった後に、一回箸を置いた。「これ、美月が作った弁当?」「えっ、どうして?」 うーんと彼は唸り「なんか違う。俺の好きな味じゃない。卵焼きも全然違う」 箸は止まったままだ。「それ、家政婦さんが作ってくれたお弁当なの」 私がそう伝えると「なんだ。美月の作った弁当、食べれると思ったのに」 彼の目線が鋭くなった。「私の料理なんて、あの時食べただけでしょ?どうして違う人が作ったってわかったの?」 毎日食べているのなら、違いがわかるかもしれないけど。「このおかずは味が濃い。なんか雑。下処理とかしてない」 なんか雑って、どういうことだろう。 彩りだって綺麗だし、私もほぼ毎日美和さんのご飯食べているけど、不味いと感じたことはない。「俺、残すの嫌いだから食べるけど」 その後、彼の箸は止まらなかった。「今度、美月が作った弁当食べたい。作ってきて」「へっ?」  なにそれ。 美味しいお弁当くらい、加賀宮さんならすぐ買えるのに。「俺が弁当食べたいって言うのは本音だけど。テイクアウトのプレートも考えてるんだ」 なんだ、そういう理由か。「わかった。今度考えて、作ってくる」 <加賀宮さんに協力する>そう言った事情なら、孝介だって何も言えないだろう。「食材にかかる費用は、俺が出すから」「うん。ありがとう」 ちゃんとそこまで考えてくれてるんだ。 「それで、美月はこのパスタ食べて、どう思った?」「えっと、普通に美味しいなって」「具体的に?」

  • Love Potion   過去 6

     次の日――。「失礼します。はじめまして。九条と申します。よろしくお願いします」 昨日教えてもらったスタッフの控室に入り、中に居た数人のスタッフさんに挨拶をした。 その中には、女性リーダーの藤田さんも居て「昨日はありがとうございました!よろしくお願いします」 明るく声をかけてくれ、他のスタッフさんへ私を紹介してくれた。「今日は、モニターとして実際にお店の雰囲気を見学していただければと思います」 そう言われ、お客さんが座る席へ案内される。「何かあったら遠慮なく言ってくださいね?」 ニコッと藤田さんが笑ってくれた。 藤田さんも綺麗な人だな。 ミディアムくらいの髪の毛をしっかりと結び、お化粧もそんなに濃くない。清潔感のある人。 席に置いてあるメニューを見たり、お客さんの雰囲気などを見て、気づいたことがあったらメモを取っていた。 一人の人が多いな。 お店のBGMは落ち着いた雰囲気だ。 今のところドリンクメニューを頼んで、長時間滞在している人が多い。 本を読んだり、タブレットを見たり、パソコンを開いてたり。 それがランチになると雰囲気がガラリと変わった。 オフィス街ともあり、ランチメニューを頼んで、すぐ食べて帰る人ばかり。 男の人も増えるんだな。 スタッフさんも忙しそうだ。 簡単に作れて、男性もお腹いっぱいになるようなカフェメニュー……。 実際に現場に来て、いろいろ感じることがあった。 ランチも落ち着き、お客さんが少なくなった頃――。 メモを取っていると「すみません。隣、座っても良いですか?」 その声にビクっと身体が反応した。声の主を見る。「お疲れ様です。加賀宮社長」 他のスタッフさんの手前「驚かさないでよ!」と言うわけにもいかない。「お疲れ様です」 加賀宮さんは私の隣に座った。 加賀宮さんの姿を見て、リーダーの藤田さんが「お疲れ様です。どうしたんですか?」 すぐ駆け寄り、加賀宮さんに声をかけた。「お疲れ様です。連絡もなしに、すみません。今日は九条さんが二日目と言うことで、せっかくなので、ベガのランチを一緒に食べようと思いまして。九条さんにも事前に伝えるのを失念してしまいました」 微笑む彼は、柔らかな雰囲気、偽りの加賀宮さんだ。 「そうなんですね!今からランチメニューをご用意します。日替わり

  • Love Potion   過去 5

    「美月に加賀宮社長とか言われるの、不思議な感じした」 耳元で彼が話す。「私だって、九条さんとか言われるの、不思議だった。て言うか、嫌だった。加賀宮さんには、名前で呼んでほしい」 素直に伝えている自分がいる。「俺に……。少しは心開いてくれたの?」「少し……ね」 加賀宮さんは、私の働きたいと言う希望を叶えてくれた。 どんな理由なのか、どうして私にそこまで関わろうとするのか、まだまだわからないことだらけだけど、今の自分にとって、あの家から出ることは救いだ。 だから正直に答えたのかもしれない。「少しでもいい」 一言、彼がそう呟いたあと、抱き起こされた。「これは真面目な話なんだけど、メニューの資料、ありがとう。あとでゆっくり見るから。ここまでしてくれるなんて、思ってなかった」 あっ、良かった。 私も気になっていたこと。「ごめんなさい。今時手書きでノートとか……」「本当はできるんだろ?苦手とか言ってたけど、基本的なパソコンスキルがないと、前の会社の事務なんて勤められないことくらいわかる。あいつが自分のパソコンとか使わせるとは思えなかったから……」 わかってくれてたの?「できることをやろうとしてくれた姿勢、俺は好きだから」 なんか、上司に褒められたみたいで嬉しい。「ありがとう」 それ以上の言葉が出てこなかった。 その後、彼の運転でベガへ移動し、店内の説明を受けた。 しばらく見学をし、その日は帰宅することになった。 明日からは直接ベガへ行くことになる。  加賀宮さんは<別件がある>と言って、途中移動してしまったが「何かあったら遠慮なく相談してくださいね」 別れる時、余所行き用の言葉を私に残してくれた。  孝介が居るはずの自宅へ帰宅する。 リビングへ向かい「ただいま」 声をかけた。 テレビの音がする。 孝介がソファに座っていた。「どうだった?」 もちろん<おかえり。お疲れ様>なんて言葉はかけてくれなかった。「今日は本社で説明を受けたあと、カフェに移動して、お店の中を見せてもらったくらい」「あっそ。なら良かったけど。何かあったら、事前にちゃんと報告しろよ」 孝介が言う<何かあったら>は、九条家の評価を下げるようなことをしてしまったらという意味。 私のことを心配して言っているわけではない。

  • Love Potion   過去 4

    「以上になりますが、何かご質問などはありますか?」 加賀宮さんは少し首を傾けた。 そんな動作も加賀宮さんの素を知らなかったら<素敵!>だと思ってしまいそう。「いえ。ありません。ありがとうございます」「では、これからベガへ移動をして……」 あっ。一応、現場に行く前に見せた方が良いよね。 私はバッグの中から自分なりにまとめた資料を取り出し、提示した。「加賀宮社長、御社のホームページなどを拝見させていただき、メニューについてはいくつか考えてきたものがあります。使用する食材、カロリー計算、作業工程など簡単にはなってしまいますが、まとめてきました。申し訳ございません。私、パソコンが苦手で。全て手書きになってお見苦しい点もあるのですが……」  そう伝えたが、パソコンが苦手なわけではない。 自宅には私が使って良いパソコンやタブレットがない。 孝介に買ってほしいとも言えなかった。  漫画喫茶とか、考えたけど、孝介が工面してくれるわけなかった。 相談したけど<お前、調子に乗るなよ。メニューができたら、はい、さよなら。の一回だけの依頼だろ。九条グループと親密になりたいから、加賀宮さんもお前なんか雇ってくれたわけで。もしそういうの使いたいなら、加賀宮さんに頼めよ。無駄な出費になるだけだし、俺は出さないよ> 予想はしていたが、私の頼みを聞いてくれるわけなかった。 加賀宮さんはメガネの奥で一瞬、目を見開いた。 <加賀宮社長>などと呼んだからだろうか。 私も呼んでみて、なんか気持ち悪かったけど、馴れ馴れしくするのも間違っている気がする。あくまでこれはビジネスだ。  しかしすぐにパッと彼は微笑み「ありがとうございます。ぜひ、拝見させていただきます」 私が提示したノートに目を通してくれている。 心の中の本音は、どう思ってるんだろう。「素晴らしいですね。事前にここまで調べてくださり、ありがとうございます。こちらのノート、一旦お預かりして、データを取っても良いですか?共有したいので」「はい。もちろんです」 そうだよね、データだったら印刷とか簡単にできるのに。 誰かの雑務、増やしちゃったかな。  その後、実際にベガへ移動して、店内の説明を受けることになった。「九条さんは、私と一緒の車で移動をします。平野リーダーと藤田

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